デイケア
精神科、及び心療内科で行われているデイケアについてお話しいたします。
デイケアは、精神科・心療内科におけるリハビリテーションの集団治療法のひとつです。対象となる方は、外来通院をされている患者さんで、統合失調症、うつ病、神経症を含め幅広い症状の方がデイケア治療に適応となります。
この治療の目標は、自分がくつろげる居場所を確保しながら、対人交流の活性化や自由な意見の交換などを通して、生活活動を広げながら社会復帰や症状の緩和を目指すものです。それでは、その内容についてもう少し具体的に紹介いたします。各デイケア治療を行っている病院やクリニックで若干異なりますが、おおむね月曜日から金曜日まで、午前9:30から午後3:30までデイケア治療が行われております。もちろんこれは患者さんの希望により利用回数は自由です。
その内容は、毎日いろいろなプログラムが用意されており、音楽療法、パソコン教室、室内運動、料理教室、生活技能訓練、野外レクレーションなどがあります。また、デイケア専門の看護師、臨床心理士、精神保健福祉士が、個別に生活療養相談、服薬指導、訪問看護、就労支援、地域の社会復帰施設との交流なども行います。現在では、このような活動を経て、治療効果があることが報告されていますので、通院されている病院、クリニックの先生に相談されても構いませんし、各市町村の保健所に問い合わせるとデイケア治療について説明を受けることが可能です。
(直江クリニック/直江裕之)
PSW
PSWとは、Psychiatric Social Workerの略で、精神科ソーシャルワーカーの意です。クリニックやデイケアのPSWは、主として①障害者手帳、年金、自立支援などの各種制度や社会資源(作業所、地域生活支援センター、医療福祉施設など)についての相談窓口、②金銭管理の相談などの生活支援、③就職相談、ジョブコーチ活動などの就労支援、といった業務を担います。また、その地域の他施設(行政、作業所、生活支援センター、ハローワーク、ヘルパーステーション、職業センター、他医療機関など)と協力し合い、時にケース会議を持つなど、地域連携のコーディネーター役を務めます。つまり、診療所内では、医師、看護師、心理士、作業療法士などの他職種とのチームワーク、地域内では他の社会資源との連携の鍵となる立場をとることが多いのです。すべての精神科診療所にPSWが常駐しているわけではありません。
(医療法人ほっとステーション 大通公園メンタルクリニック
デイケアほっとステーション/長谷川直美)
睡眠障害
眠れない日ぐらいは、多くの方にとって多少とも経験のあることでしょう。
眠れなくても死なない……確かにそのとおりでしょうが、眠れない日が続くと、精神的にも肉体的にも非常に辛く感じるものです。あまりこだわってもいけませんが、心地よい睡眠は精神的身体的コンディションの指標となるものです。不眠が時々あるぐらいであれば様子をみてもよいでしょうが、何日も続く、あるいはまったく眠れないとなれば、何らかの対応が必要となります。お酒の力をかりて眠っている人もいますが、これはアルコールへの依存傾向が増すため避けるべきです。
不眠で一番多いタイプは原発性不眠症、何らかのストレス的なことがあって、性格的にも神経質な方でよくみられます。寝つきがよくない、途中でなんども目を覚ましてしまうなどがおき、そのうちにそれが癖になってしまいます(条件付け)。他にも、うつ病とか精神の疾患でも不眠はあらわれます。うつ病では多くの場合、なんども目を覚ましたり、朝早くに目が覚めてしまうことが続き、目覚めの気分もよくないのが一般的です。また逆に過眠が問題となることもあります。
多いのは睡眠時無呼吸症候群というもので、寝ているときに呼吸がしづらくなるため睡眠が安定せず、そのため日中に強い眠気があらわれてきます。寝ているときに十数秒続く無呼吸と大きないびきが特徴です。ナルコレプシーという日中急激な眠り(睡眠発作)、笑ったりしたときに力が抜ける(脱力発作)、金縛りなどがみられる疾患もあります。
他にも眠る時間帯がどうしても朝方にずれてしまう、睡眠相遅延症候群という疾患もあります。
睡眠薬についての不安もよく聞くのですが、適切な指示に従って服用する限り危険はありません。睡眠についての悩みの御相談をお勧めします。
(南一条メンタルクリニック/金田圭司)
うつ病
うつ病は珍しい病気ではありません。むしろ、よくある病気の一つです。日本では全ての人の約8%がうつ病を経験すると言われています。欧米での報告ではもっと多くて、15%から20%となっています。しかも近年、うつ病は増加傾向にあると言われています。
しかし、ありふれた病気だからといって、簡単に良くなる病気、軽い病気とは限りません。多くの方(6~8割)は、通院治療を数ヶ月受けると良くなりますが、なかには、入院が必要になる方や何年も症状が続く方もいます。また一度良くなっても再発する方もいます。
うつ病を安易に捉えすぎても、過度に恐れてもいけません。全ての病気に言えることですが、大切なことは、うつ病という病気を正しく理解し、対処することです。
では、うつ病はどんな病気でしょうか?
ある方がうつ病か否かを診断するために、最近ではDSMやICDといった診断基準を用いることが多くなってきました。そこで、この代表的な診断基準、DSMを例にとって大まかに説明します。
2週間以上にわたり、ほとんど1日中、ほとんど毎日続き、病前の状態から変化を起こしていて、抑うつ気分、ほとんどの活動に対する興味や喜びの減退、食欲減退、不眠、気力の減退、集中力や思考力の減退等などのいくつかが当てはまる場合にうつ病と診断されます。
気分が落ち込む、気力が出ないといったことは誰もが経験することだと思います。それらの経験とうつ病の症状との違いは、上記の下線の部分の違いです。ですから、ほとんど1日中ほとんど毎日、ほとんどの活動に対して症状が明らかな時にうつ病と診断されるのです。この点は誤解されることが多く、注意が必要です。
(川村メンタルクリニック/川村邦彦)
うつ病の復職支援(リワーク)
就労中の労働者がうつ病などで体調を崩した場合、お薬をしっかり飲みながら就労を継続していくことが可能なケースと、長期の欠勤(病欠、療養休暇、休職など)による十分な休養を必要とするケースがあります。後者のケースでは、休職中のサポートと復職支援を目的としたプログラム(リワークプログラム)の活用が考えられます。特に、自宅での療養で生活リズムが乱れてしまったり、ずっと家にいることがストレスになってしまった方や、回復度合いが分からなくて不安になった時、再発を繰り返したり再休職などの場合には、主治医の先生に相談して、参加を検討してみると良いでしょう。
リワークプログラムは、従来から行われている作業療法やデイケア治療に工夫を加えて実施されたり、新たに専門の設備を整えたりして行われ、医療機関ごとに特徴的なプログラムが用意されています。多くの場合、職場場面を再現するような医学心理学的プログラムにより、作業効率などから思考能力の回復度合いを確かめながら、うつに陥らないための対人関係の取り方や、休日の過ごし方を含めた体調管理と生活リズムの維持方法などを学びます。また、仕事だけでなく何事にも熱心に取り組み過ぎたり、何でも自分のせいだと考え過ぎたりする癖がうつ病の原因となっていることが多いため認知行動療法(考え方の癖を治す心理療法)などを行うこともあります。その他、ヨガや卓球などの軽いスポーツを体調回復・維持のために実施したり、陶芸や絵画などの芸術療法を行ったりしています。医療機関と職場との連携も広い意味でのリワークに含まれるでしょう。
デイケアなどを用いてうつ病のリワークプログラムを専門的に実施している施設はまだまだ少数ですが、全国で40カ所ほど(H21年1月現在)あります。そのような医療機関では、毎日6時間から8時間程度、週3~5日間に渡ってプログラムを提供しています。北海道内でも札幌圏を中心に少しずつ増えてきています。
(さっぽろ駅前クリニック 北海道リワークプラザ/横山太範)
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群、RLS)
レストレスレッグス症候群(rest-less legs syndrome:RLS)は、「むずむず脚症候群」、「下肢静止不能症候群」とも呼ばれます。RLSはあまり知られておらず、一般診療では見逃されやすい疾患です。日本では人口の2-3%はいると推定され、患者数は少なくはありません。40代以降に好発し、女性に多い(男性の1.2-1.4倍)。今後、疾患の認知度が上がっていくと思われます。睡眠障害の一種ですが、当院で数種類の薬の治験を行い、現在(2018年4月)RLSに適応を取得している薬は3種類あります。脚がむずむずして不眠になるので、睡眠障害の一種とも考えられています。
●RLSの症状
足(脚)が「じっとしていられない感じ」、「むずむずする」、「痒い」、「痛い」、「虫が這うような」、「なんとも形容しがたい不快感」、さらには「脚の中に手を入れてかき回したいほど苦しい」などの自覚症状を訴えます。症状は夜間安静時、特に睡眠時間帯に増悪します。年単位で徐々に進行する慢性疾患です。ほかに以下の特徴があります。
1)不眠患者の10%程度(特に睡眠薬非反応症例に多い)にみられる。
2)自然治癒はごくまれで、進行性増悪することが多い。
3)重症例では不安、抑うつなどの精神症状を合併しやすい。
●RLSの原因
現在のところRLSの原因は明らかになっていません。ドパミンの機能低下、中枢神経における鉄分不足による代謝異常、脊髄や末梢神経の異常、遺伝学的要素などが考えられています。RLSは特発性と続発性に分けられますが、後者(続発性)は、鉄欠乏性貧血、慢性腎不全(透析患者)、妊娠、胃切除後、慢性関節リウマチ、パーキンソン病、多発神経炎、脊髄疾患、などに伴って発症することがあります(続発性RLS)。三環系抗うつ薬ないしSSRl、カフェインはRLSの発症・増悪の誘因になることもあります。
●RLSの診断基準
1)脚を動かしたいという強い欲求が不快な下肢の異常感覚に伴って、あるいは異常感覚が原因となって起こること。
2)その異常感覚が、安静にして、静かに横になったり座ったりしている状態で始まる、あるいは増悪する。
3)その異常感覚は運動によって改善すること。
4)その異常感覚が日中より夕方・夜間に増強すること。
の4つです。
※上記はこのホームページから引用させていただきました
(いつも診療で役に立っているホームページです)。
RLSはあまり御自身で病気と考えていない潜在的な患者様も多いと思われます。軽症ならいいかもしれませんが、中等症以上であれば受診をお勧めします。当院にも多くのRLSの患者様が受診しています。
当院ホームページでもRLSの話題を掲載しております。
(いしかわ心療・神経クリニック/石川博基)